ザ・ニュー・ミュージック
by トニー・ヴィスコンティ(ボウイのプロデューサー)記
(NME 2013年10月12日号より)
11月4日に発売される「ザ・ネクスト・ディ・エクストラ」のアルバムリリースに向けてのミキシングを終わらせようとしていた時、僕らは、最終的な選曲という手ごわい作業をしなければならなかった。約20曲を完成させていたが、最終月に数回、選曲と順序を変更し、やっとのことで、「これでアルバムは完成だ」と断言できた。「アトミカ」のような歌は、もう少し作業が必要で、将来のリリースのため、意図的に後回しにされていた。しかし、4つの新曲は一級品だと僕は思っている。
この一年間、クリスマスの時期のリリースに向けて、4つの新曲を仕上げるため、僕らは時々会った。歌詞のほとんどは「ザ・ネクスト・デイ」のセッションの時に完成していたが、デヴィッドはさらに歌詞を付け足し、バッキングヴォーカルや和音などを含め、新しいヴォーカルを歌った。新しいバージョンは、新しいリリースのため刷新され、真新しくミキシングされた。又、「アイド・ラザー・ビー・ハイ」を見直し、ハープシコードを加え、異なったエンディングの別のミックスを作った。
ボーナスCDには、4つの新曲が含まれている。その冒頭は「アトミカ」で、それは「ザ・ネクスト・ディ」で完成させていたら、そのハイライトにもなり得ていた、とても迫力のあるトラックだ。歌詞は長くて発音しにくく、早口で歌われている。対照的に、コーラス部では、単純に「さあ、計画を始めよう。アトミカを手に入れよう。爆発するまでロックしよう。アトミカを手に入れよう。」とデヴィッドは歌う。ギタリストのジェリー・レオナードとデヴィッド・トーンは、互いのスタイルを狂ったように渦巻かせる。ゲイル・アン・ドーシーはベースを弾き、ザック・アルフォードはドラムスを打ち鳴らす。
「ザ・インフォーマー」は、「ザ・ネクスト・ディ」のオリジナルリリースからのボーナストラックの「プラン」をさらに発展させたものだ。新しいボーナスCDにも含まれる「プラン」は、短く、不吉なインストロメンタルで、非常に示唆に富んでおり、楽器の使用を最小限に控えた、脅すような緩慢なドラムビートのイントロだ。「ザ・インフォーマー」は、不穏なイメージを呼び覚ます歌詞のついた、さらに陰惨な作品だ。「浴室の床に血だまりを作った/鏡は壊れ、ドアには亀裂がある。」ボウイの不安げなリードボーカルと、さらにボウイ自身による12トラックのバックボーカルと和音が加わる。レオナードとトーンは、催眠術にかけるようなギターを弾き。ドーシーとアルフォードはファンキーなビートを利かせている。
「ボーン・イン・ア・ユーエフオー」は「ザ・ネクスト・デイ」のセッションの最終段階で、他のいくつかの歌と共に収録された。アルバムリリースには、「バレンタインズ・デイ」だけが最終的な選択に残った。「ボーン・イン・ア・ユーエフオー」は、絶え間なく続くペースの速い歌詞のかなり濃密な音楽作品だ。「僕は空き地に車を止めて円盤の地面を見た。/円盤は霧の中を滑り抜け…。」そして、歌は本当に狂気じみていく。この歌は「ロジャー」の頃に収録できていただろう。アール・スリックの弾くアンダルシア的なギターソロがあり、それらしいコードをしているからだ。トリはドラムスのスターリン・キャンベルにベースだ。
「ライク・ア・ロケット・マン」は、軽快なビートを装いながら、歌詞はより暗い場所に向っており、今回はデヴィッドは冷笑しながらそれを歌っている。「僕は窓から這い出る。壁を這って降りる/僕は幸せの叫びを上げる、確かにそうだ。」デヴィッド・トーンが歌の途中からを仕切ると、恐怖感をそそり始め、次第にフェイドアウトしていく。
「アイル・テイク・ユー・ゼア」は、「今日は5月1日だ。周囲の物全てが嘘だ。」という文言で始まる。デヴィッドはたまたま5月1日の朝、書きたての歌詞を携えて到着し、リードヴォーカルを歌った。こういった事は、デヴィッド・ボウイの収録では良く起こる。
「ゴッド・ブレス・ザ・ガール」は、収録の最後の方で完成した時まで、とても長い間、仕事上では「ゴスペル」というタイトルで通っていた。それはとてもエネルギーに溢れたトラックだ。ある時点でそれは「ザ・ネクスト・デイ」に入っていたが、トラックリストを上ったり下りたりして、それからアルバムから外されたり戻されたりしたが、結局は、日本盤のアルバムリリースのためのボーナストラックに割り当てられた。
僕は決してボウイの歌詞を最も上手に解釈する人間ではないが、もう一度僕は危険を冒す。「ソー・シー」は切ない気持ちで歌われたラブ・ソングだ。何だか僕をロマンティックに悲しい気持ちにさせる。和音の上では短い曲の割にはかなり高度だ。
「ラブ・イズ・ロスト」は、アルバムのバージョンとはとても異なっている。LCDサウンドシステムのジェームズ・マーフィーは本当に素晴らしいリミックスを作った。単なるダンスリミックスではない。何度も聴いた後、明らかになる何かが結構たくさんある。マーフィー氏に僕は帽子を脱ぐ。
「ザ・ネクスト・デイ」とそのボーナストラックは、郷愁の旅ではない。あらゆる真剣なアーティストに基調となる書き方があるが、それを僕はボウイの作品の中に認識する。彼の新しい作品の中には、痕跡を辿ることができる引用や要素がある。彼は自分自身のままでいるより他にないのだ。「ザ・ネクスト・デイ」の音とスタイルは現在だ。これはデヴィッド・ボウイを出自とする新しい音楽であり、デヴィッド・ボウイのような音がする!
デヴィッドと一緒に働くことは、一緒に創ったスタジオアルバムの数が二桁に届くような、生涯に渡る職業のようなものになっている。彼の他のプロデューサーとの収録の中には、僕のお気に入りのものもあるが、彼と働くことが好きだ、僕の仕事を好きだとわざわざ発言するまでもない。僕はスタジオでじゃがいもみたいに座っている訳ではない。僕は彼の声を収録し、時には彼の隣に立ち、バックボーカルを歌うこともある。僕は彼のバンドで演奏もしたし、収録のミキシングもした。そのことを考えると顔から笑みを拭い去ることは本当に難しい。僕らは隣に並んで仕事をし、良くコミュニケーションを取り、多くの事をやり遂げてきた。それは音からも感じることができるだろう。彼が歌を書いていると聞いて嬉しいし、新曲はさらにこれまで以上に凄い物になるだろうと感じている。(僕たった今凄いって言った?)さらに二年、それを秘密にしておく必要がないことを切に祈る。
by トニー・ヴィスコンティ(ボウイのプロデューサー)記
(NME 2013年10月12日号より)
11月4日に発売される「ザ・ネクスト・ディ・エクストラ」のアルバムリリースに向けてのミキシングを終わらせようとしていた時、僕らは、最終的な選曲という手ごわい作業をしなければならなかった。約20曲を完成させていたが、最終月に数回、選曲と順序を変更し、やっとのことで、「これでアルバムは完成だ」と断言できた。「アトミカ」のような歌は、もう少し作業が必要で、将来のリリースのため、意図的に後回しにされていた。しかし、4つの新曲は一級品だと僕は思っている。
この一年間、クリスマスの時期のリリースに向けて、4つの新曲を仕上げるため、僕らは時々会った。歌詞のほとんどは「ザ・ネクスト・デイ」のセッションの時に完成していたが、デヴィッドはさらに歌詞を付け足し、バッキングヴォーカルや和音などを含め、新しいヴォーカルを歌った。新しいバージョンは、新しいリリースのため刷新され、真新しくミキシングされた。又、「アイド・ラザー・ビー・ハイ」を見直し、ハープシコードを加え、異なったエンディングの別のミックスを作った。
ボーナスCDには、4つの新曲が含まれている。その冒頭は「アトミカ」で、それは「ザ・ネクスト・ディ」で完成させていたら、そのハイライトにもなり得ていた、とても迫力のあるトラックだ。歌詞は長くて発音しにくく、早口で歌われている。対照的に、コーラス部では、単純に「さあ、計画を始めよう。アトミカを手に入れよう。爆発するまでロックしよう。アトミカを手に入れよう。」とデヴィッドは歌う。ギタリストのジェリー・レオナードとデヴィッド・トーンは、互いのスタイルを狂ったように渦巻かせる。ゲイル・アン・ドーシーはベースを弾き、ザック・アルフォードはドラムスを打ち鳴らす。
「ザ・インフォーマー」は、「ザ・ネクスト・ディ」のオリジナルリリースからのボーナストラックの「プラン」をさらに発展させたものだ。新しいボーナスCDにも含まれる「プラン」は、短く、不吉なインストロメンタルで、非常に示唆に富んでおり、楽器の使用を最小限に控えた、脅すような緩慢なドラムビートのイントロだ。「ザ・インフォーマー」は、不穏なイメージを呼び覚ます歌詞のついた、さらに陰惨な作品だ。「浴室の床に血だまりを作った/鏡は壊れ、ドアには亀裂がある。」ボウイの不安げなリードボーカルと、さらにボウイ自身による12トラックのバックボーカルと和音が加わる。レオナードとトーンは、催眠術にかけるようなギターを弾き。ドーシーとアルフォードはファンキーなビートを利かせている。
「ボーン・イン・ア・ユーエフオー」は「ザ・ネクスト・デイ」のセッションの最終段階で、他のいくつかの歌と共に収録された。アルバムリリースには、「バレンタインズ・デイ」だけが最終的な選択に残った。「ボーン・イン・ア・ユーエフオー」は、絶え間なく続くペースの速い歌詞のかなり濃密な音楽作品だ。「僕は空き地に車を止めて円盤の地面を見た。/円盤は霧の中を滑り抜け…。」そして、歌は本当に狂気じみていく。この歌は「ロジャー」の頃に収録できていただろう。アール・スリックの弾くアンダルシア的なギターソロがあり、それらしいコードをしているからだ。トリはドラムスのスターリン・キャンベルにベースだ。
「ライク・ア・ロケット・マン」は、軽快なビートを装いながら、歌詞はより暗い場所に向っており、今回はデヴィッドは冷笑しながらそれを歌っている。「僕は窓から這い出る。壁を這って降りる/僕は幸せの叫びを上げる、確かにそうだ。」デヴィッド・トーンが歌の途中からを仕切ると、恐怖感をそそり始め、次第にフェイドアウトしていく。
「アイル・テイク・ユー・ゼア」は、「今日は5月1日だ。周囲の物全てが嘘だ。」という文言で始まる。デヴィッドはたまたま5月1日の朝、書きたての歌詞を携えて到着し、リードヴォーカルを歌った。こういった事は、デヴィッド・ボウイの収録では良く起こる。
「ゴッド・ブレス・ザ・ガール」は、収録の最後の方で完成した時まで、とても長い間、仕事上では「ゴスペル」というタイトルで通っていた。それはとてもエネルギーに溢れたトラックだ。ある時点でそれは「ザ・ネクスト・デイ」に入っていたが、トラックリストを上ったり下りたりして、それからアルバムから外されたり戻されたりしたが、結局は、日本盤のアルバムリリースのためのボーナストラックに割り当てられた。
僕は決してボウイの歌詞を最も上手に解釈する人間ではないが、もう一度僕は危険を冒す。「ソー・シー」は切ない気持ちで歌われたラブ・ソングだ。何だか僕をロマンティックに悲しい気持ちにさせる。和音の上では短い曲の割にはかなり高度だ。
「ラブ・イズ・ロスト」は、アルバムのバージョンとはとても異なっている。LCDサウンドシステムのジェームズ・マーフィーは本当に素晴らしいリミックスを作った。単なるダンスリミックスではない。何度も聴いた後、明らかになる何かが結構たくさんある。マーフィー氏に僕は帽子を脱ぐ。
「ザ・ネクスト・デイ」とそのボーナストラックは、郷愁の旅ではない。あらゆる真剣なアーティストに基調となる書き方があるが、それを僕はボウイの作品の中に認識する。彼の新しい作品の中には、痕跡を辿ることができる引用や要素がある。彼は自分自身のままでいるより他にないのだ。「ザ・ネクスト・デイ」の音とスタイルは現在だ。これはデヴィッド・ボウイを出自とする新しい音楽であり、デヴィッド・ボウイのような音がする!
デヴィッドと一緒に働くことは、一緒に創ったスタジオアルバムの数が二桁に届くような、生涯に渡る職業のようなものになっている。彼の他のプロデューサーとの収録の中には、僕のお気に入りのものもあるが、彼と働くことが好きだ、僕の仕事を好きだとわざわざ発言するまでもない。僕はスタジオでじゃがいもみたいに座っている訳ではない。僕は彼の声を収録し、時には彼の隣に立ち、バックボーカルを歌うこともある。僕は彼のバンドで演奏もしたし、収録のミキシングもした。そのことを考えると顔から笑みを拭い去ることは本当に難しい。僕らは隣に並んで仕事をし、良くコミュニケーションを取り、多くの事をやり遂げてきた。それは音からも感じることができるだろう。彼が歌を書いていると聞いて嬉しいし、新曲はさらにこれまで以上に凄い物になるだろうと感じている。(僕たった今凄いって言った?)さらに二年、それを秘密にしておく必要がないことを切に祈る。
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